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 すり、と頬を掠めたやさしい指が離れていこうとしたのをボクは、咄嗟にその上へ自分の手のひらを添え留まるよう、君を正面から見据えてしまった。
 刹那の沈黙と少しばかり驚きに開かれた目許はしかし、すぐに甘く細く眇られ、ボクを真っ直ぐに捕らえる。

「…昼のオレ」
「夜の、ボク…」

 どちらからともなく触れた、互いの頬と頬。あたたかさが滲みまるで、このまま溶け合うかのような錯覚に躰が満たされていくのがわかった。嬉しいと、思った。
 ボクはいつだって君を欲し、守りたいと願い、失いたくないと祈る。
 君がボクの一部であるのかそれとも、ボクが君の一部であるのかは、わからないままでいいと思う。ボクらは、きっとふたりでひとつなのだから。
 たとえば、もしものはなし。いつかそれが背中越しでしか許されない体温となってしまっても、指先で触れることしか叶わない距離となってしまっても、少し寂しいけれどそれでもボクは構いはしない。君と同じ鼓動を刻んで生きていると感じることさえできればボクは、安心して深く息を廻らせることができるんだ。
 それが決して変わることのない、ボクの真実。

 音も立てず静かに流れる銀色の髪へと指を絡め、そっと梳く。

「綺麗だね」

 さらさらと仄かに輝くやわらかさを確かめながらボクは、名残惜しさを僅かに胸に残し、ゆっくりと目蓋を落とした。
 また逢える、その刻を心待ちにしながら。

 意識が入れ替わる刹那、悲しいほどにきつく、抱き包まれた気がした。




12.05.27
昼視点。