[ sun blaze ] 髪にも触れたくなって、頬を撫でていた指を離しただけだったのに。 突然の制止と酷く切な気なお前の表情とにぶつかって、思わず言葉を次げず呆けてしまった。 気まずさを孕んだ沈黙。今にも泣き出してしまいそうになっている大きな眸に、そんな顔をしてくれるなと、苦笑を交えながらそっと見据え、そして呼ぶ。 「…昼のオレ」 「夜の、ボク…」 すっと顔を屈めたら、それに吸い寄せられたかのように触れてきたお前の頬。ふわりと移る、互いの熱。このまま溶け合ってしまいたいと望んでしまったのはこれで幾度目か知れない。 お前は曖昧なままでいいと云うが、オレはお前の一部となってしまっても構わないと思っている。 絶対に守る、誰にも傷付けさせはしない。お前の笑みの、たったひとつでさえも溢さず掬いたいと望む。それだけが己を造り上げている大切な芯なのだ。 これが決して紛うことのない、オレの真実。 遠慮がちに伸ばされた小さな手が、オレの髪を撫でてきた。 「綺麗だね」 声のあたたかさに、愛おしさと直に訪れる別れの刻への切なさが募る。 やがてオレを映していた眸が隠れ、沈みかけた刹那。行くなと、その身を力一杯抱き竦めてしまった。 幸いと、今は思うべきか昼のオレの意識はもうここから消えていた。今し方囚われた気持ちに、動揺が鎮まらない。 時折、お前を手離せなくなる衝動に駆られてはこうして、後悔と恐怖に身を固くさせてしまっている。 そして何より、オレはお前にこの事実を伝えていない。 己が仕舞っておけばいいのだ。余計な不安など、絶対に与えたくはないのだから。お前の心は、オレが守ってやらなければ、いけないのだから。
12.05.27 |